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労務管理の判例ご紹介

判例に見る職場のトラブル(10)管理職に対する残業代

判例のご紹介管理職に対する残業代の支払

(大阪地裁判決昭和61.7.30レストランビュッフェ事件)

ファミリーレストランの店長X氏は、コック等の従業員6~7名を統率して、ウェイターの採用にも一部関与していました。

材料の仕入れ、売上金の管理等も任せられていましたが、営業時間の午前11時から午後10時までは、完全に拘束されていて、出退勤の自由が認められていませんでした。仕事の内容もコック、ウェイター、レジ係り、掃除など店の運営のための全ての仕事をこなしていました。

会社側はX氏は管理監督者であり、一般労働者ではないとして、残業代を支払わず、月2~3万円の店長手当てを支払っていました。X氏はこれを不服として割増賃金支払を求めて提訴しました。

判決では、X氏に出退勤の自由がなく、ウェイターの労働条件も最終的には会社が決めているとして、X氏は管理監督者には当たらないとしました。

 

労働基準法では、労働時間の規定の適用除外者として、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」を挙げています(第41条第2項)

これらの人は経営者と一体的な人として、厳格な労働時間管理になじまないと判断されているわけです。

旧労働省の通達によると、「一般的には部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあるものの意であり、名称にとらわれず実態に即して判断すべきものである」としています。

また、同通達で、「実態に基く判断」とは、「資格、及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要がある」としています。

その他、待遇面にも言及しています。「賃金の待遇面についても無視し得ないもの」として、「その地位にふさわしい待遇がなされているか否か」「ボーナス等の一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても役付き者以外の一般労働者と比し、優遇措置が講じられているか否か」を判断基準として挙げています。

一般労働者とは違うそれなりの待遇と権限を与えられているからこそ、労働時間の枠をはずしてもいいという考え方だと思われます。

社員を管理監督者として残業代の支払対象から外す場合は、十分な権限とそれに見合った待遇、労働時間についての裁量などが与えられているかが、問題となります。判断材料として以下の事項が挙げられます。

①労働時間に対する裁量(出退勤の時間が厳格に管理されているか否か)

②職務上の権限と責任

③経営者と一体的な立場で労務管理上の決定権、人事考課権などがあるか。

④給料、賞与などで地位にふさわしい高い処遇を得ているか。

以上の要件を充たしてはじめて労働基準法にいう管理監督者となり、「残業代を支払わなくてよい人」となるのです。

最近、「店長」など名前ばかりの管理職にして、残業代を支払わず、裁判になる例が増えています。未払い賃金は2年間分遡って支払うことになりますし、遅延損害金、付加金の支払など、経営者にとって裁判に負けると大変な出費となります。

法令遵守しないことのリスクを経営者の皆様は是非意識していただきたいと思います。

残業手当については、労使ともによく納得することが大切だと思います。

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