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労務管理の判例ご紹介

判例にみる職場のトラブル(4)セクハラ

判例のご紹介 セクシャルハラスメント

(福岡セクハラ事件 福岡地裁判決平成4年4月16日)

セクハラのリーディングケースとなった判例をご紹介します。

昭和60年12月にY社に雑誌編集者としてアルバイトで入社し、後に正社員となったAは能力のある女性で次第に頭角を現します。おもしろくない編集長Bは、「Aは結構遊んでいる」とか「○○と怪しい仲だ」などと、Aの異性関係が乱脈であるかのような噂を流します。

昭和62年12月、BがAに転職を勧めたことから両者の関係が悪化、業務に支障が生じるようになり、Y社のC専務がY社代表者と協議して、どちらかに退職してもらうことになります。結局あくまでも謝罪を要求するAが退職の意思を表明したため、Aは退職、Bは3日間の自宅謹慎となりました。その後、AがBの言動はセクシャルハラスメントだとして、B、C、Y社に損害賠償を求めた裁判です。

判決では、Bの言動は「働く女性のAの評価を低下させるもので、その名誉感情、その他の人格権を害するものであり、職場環境を悪化させるもの」としてBの不法行為責任を認めました。また、Y社代表者とC専務についても「Bの上司として職場環境を良好に調整すべき義務がありながらそれを怠り、主としてAの譲歩、犠牲の上に調整しようとした」として不法行為責任を認めました。

性的中傷を含む言動が被害者の労働環境を悪化させ、退職を余儀なくさせるという事態に対して、不合理であり、直接に被害を及ぼした者と同時に会社側にも責任があるとしたものです。

 

職場でのセクシャルハラスメントには、「対価型」と「環境型」があります。

前者は職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により、解雇、降格、等、当該労働者が不利益を受けることを言います。後者は、職場において行われる性的言動により、職場環境が害されることを言います。

ご紹介した判例は、判決文でセクシャルハラスメントという文言は使っていませんが、いわれのない性的中傷を受けた労働者の就業環境が悪化し、退職にまで追い込まれたことについて、不法行為責任を認め、さらに使用者の責任も肯定している点で、セクハラの先例的判例です。

この判決の当時はセクハラを直接規制する法律がなく、不法行為により救済されましたが、平成19年4月からの改正男女雇用機会均等法では、男女双方に対するセクハラ防止の「措置」が使用者に義務づけられました。

厚生労働省の指針では、セクハラに対する周知や啓発、相談窓口の設置、セクハラを行った者に対しての厳正な対応、就業規則や服務規律で明確化することなどの措置をするように求めています。

セクハラが職場で行われますと、労働者の働くモチベーションが下がり、優秀な人材を失うことにもなりかねません。

セクハラは絶対に許されないということを周知・徹底するためにも、就業規則、社内規程などを見直して整備してください。

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