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就業規則関連の法改正(6)労働契約法

労働契約法(平成20年3月1日施行)

労働契約法は労働基準法では明文化されていなかった、労使間の労働契約についてのルール、労働契約と就業規則の関係などを定めることにより、労働者の保護を図り、個別の労使関係の安定に資することを目的とした、新しい法律です。

内容は、これまで判例により確立されてきた「判例法理」を明文化したものが目立ちます。

「判例法理」とは、法律により明文化されてはいませんが、法律の解釈について裁判で明らかにされ、同じような判例が積み重ねられることにより、一つの法理として確立されたものです。

それらが法律として明文化された意義は小さくはありません。

今までは、「判例があるから、同じように考えるのが妥当ですよ」と言っていたものが、「法律で決まってるからだめ」とはっきり言えるようになったのです。

主な内容は以下のとおりです。

1.権利の濫用の禁止(第3条第3項)

労使双方が労働契約に基く権利の行使にあたり、濫用してはならないことが義務づけられました。

労働基準法では、法令、就業規則、労働契約を遵守することは義務付けられていますが、権利濫用の禁止は明文化されていません。様々な労使紛争に対して、権利を濫用することの禁止が判例として出ています。それらが明文化されました。

※ 権利の濫用とは、一見権利を主張しているようでも、それが本来の使命を超え、社会的にも相当とはいえないほど限界を超えて主張されていて、正当な行使とはいえない状態を言います。

労使関係では、主に使用者側に対して使われます。解雇権の濫用、人事権の濫用、懲戒権の濫用等です。労働者側にも生理休暇の濫用を認定した判例(タケダシステム事件東京高裁判昭和62.2.26)などがあります。

2.使用者の安全配慮義務(5条)

判例法理として確立していた使用者の安全配慮義務が明文化されました。

使用者は労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとすると規定されました。

働きやすい安全で快適な職場環境を提供することや、労働者の健康面に配慮することが、今まで以上に使用者に求められるようになります。

過重労働に配慮することの他に、セクシャルハラスメントやパワーハラスメントに対する措置、 うつ病等の防止など社員のメンタルヘルス等についても対策を怠っていた場合、責任を問われるおそれがあります。

3.就業規則の不利益変更の条件(第9条、10条)

就業規則は労働者の合意なく一方的に使用者が作成できますが、不利益な変更についても、判例が多く出ています。それらが明文化されました。

第9条で労働者の合意なく不利益変更はできないとした上で、第10条で労働者に変更後の規則を周知させた上で、

①労働者の受ける不利益の程度、②変更の必要性、③変更後の就業規則の内容の相当性、④労組等との交渉の状況、⑤その他の事情、に照らして合理的なものであるときは、不利益変更可能としています。

4.出向、懲戒、解雇における権利濫用の禁止(第14条、15条、16条)

出向については、

①その必要性、②対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして権利の濫用と認められる場合は無効となります。

懲戒については、

労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は権利の濫用として無効となります。

解雇については、

労働基準法18条の2と同様に、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、権利の濫用として無効となります。

なお、労働基準法18条の2は削除され、そっくりそのまま労働契約法16条の条文となります。

5.期間の定めのある労働契約について(17条)

有期労働契約について、やむを得ない事由がないときは、契約期間が満了するまでの間に解雇することができないことが明文化されました。

また、使用目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、反復して更新することのないように配慮することが義務付けられました。

労働契約法では、就業規則に合理的な労働条件が定められ、労働者に周知させた場合は、労働契約の内容は就業規則によるものとされました。(個別の労働契約の内容が就業規則の基準以上の場合はそちらが優先されます)

今後、就業規則は今まで以上に重要となります。

法令に合致したしっかりとした就業規則を作成してください。

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